傷の処置の重要事項
傷の処置で、特に重要な事項についてご紹介します。
【1】洗浄
傷を負った直後に真っ先に行うべきケアが、止血と洗浄です。特に洗浄は、異物混入による感染のリスクを軽減するので入念に行うべきです。傷の奥深く異物が混入していたり、多量の泥や砂、ガラスが混入していたりする場合は、すみやかに専門医療機関へ送り、適切なデブリドマン*、ブラッシングなどの処置を受けるべきです。この場合は麻酔が必要なことが多いでしょう。洗浄は清潔な生理食塩水でと医学書にも記載されていますが、これは全く根拠がなく、洗浄は水道水で十分です。水道水はどこにでもあるものであり、早急にケアができるので、どんな場面でも対応が可能です。
消毒薬ポビドン・ヨード(商品名イソジン、ネオヨジン、マイクロシールド)のうち、イソジンが一般的なスポーツや医療現場で消毒薬として頻繁に使用されているようです。しかし、イソジンの殺菌作用はヨウ素の酸化力により、その殺菌力は細菌にだけ有効なのではなく、生体細胞全般に分け隔てなく作用し、傷を治癒させるために必要な細胞も殺します。イソジンンの細胞毒性はすでに各論文で明確になっています。細菌と何かの有機物とが共存していれば、イソジンの殺菌力は低下します。化膿している傷は有機物だらけですので、膿だらけの傷・出血している傷では、その殺菌力はかなり低下して、添加物による細胞毒性は残存しています。となると、傷を消毒するという行為は、殺菌のためではなく、傷を感染させやすい状態をつくり、傷の治りを悪くする行為にほかなりません。消毒ではなく傷毒なのです。マキロン、キズドライ、オキシフルなどの消毒薬も同様です。医療現場では、クロルヘキシジン(ヒビテン、マスキン)はアナフィラキシーショックで多数の死亡事例も報告されています(文献4参照)。傷の治りを悪くするだけでなく、大きなリスクの危険もあり、痛みも増強する消毒は、特別な場合を除いては行うべきではありません。一刻も早く傷を治したい状況で、傷の消毒は百害あって一利なしなのです。私の20年以上の臨床経験では、傷を消毒しなくて感染症が発症したり、傷の治癒が遷延したりした事例は皆無です。また、ガーゼを毎日張り替え、傷を消毒して治癒が遅れ、競技に支障を来したアスリートの事例を、数多く診てきました。スポーツの世界では、これらの行為はアスリートの選手生命を脅かすこともあるのです。
「消毒しないと破傷風になったらどうするんだ!」とういご意見もあります。
また、屋外で傷を負う機会が多いスポーツ選手たちにとって最もご心配なことかもしれません。
http://www.wound-treatment.jp/next/wound167.htm
消毒は破傷風予防の第一選択ではありません。
消毒薬とは何か?
消毒薬は蛋白質を破壊して殺菌する |
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細菌の蛋白質と人体の蛋白質を区別しているわけでない |
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人体細胞と細菌どちらが強い? |
イソジンを例に取ると、イソジンの殺菌作用はヨウ素の酸化力によるものである。従ってその殺菌力は細菌にだけ有効なのではなく、生体細胞全般に分け隔てなく作用する。
殺菌効果をもつのは10%イソジン溶液のみで,1%に希釈されると殺菌力はほとんど期待できなくなる。しかし、0.1%に希釈されたイソジンは,創治癒に最も重要な細胞(線維芽細胞,上皮細胞,好中球など)全てを全滅させることが可能。
消毒で人体細胞は死に細菌は生き残る |
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傷を消毒すればするほど、 |
消毒薬は無害でも安全でもない
■クロルヘキシジン(ヒビテン ,ヘキザック)でアナフィラキシーショックから呼吸停止が起きている。
■家庭消毒用クロルヘキシジン(マキロン )の誤飲で死亡事故が起きている。死亡率が高い。
■ポビドンヨード(イソジン)は接触性皮膚炎を起こす率が高い。
傷に直接ガーゼを当てたらどうなるのでしょうか?ガーゼを傷に当てることで感染が防げたり、傷が早く治ったり、痛みが軽減したりすることはありません。効果があるとすれば、滲出液のコントロールと一時的な止血ができるだけです。傷にくっついたガーゼをはがすとき、出血を起こしせっかく治るための細胞が集まってきた場を、乱暴にもむしり取ることになります。ガーゼを当てると血液がガーゼに吸収され、傷が乾燥してせっかく傷を治すために現れた細胞を死滅させます。ですから、傷にガーゼを直接張るという行為は特別な場合を除いては行ってはいけません。ガーゼは創面の破壊材料なのです。傷の保護という目的であれば、食品用ラップを傷に直接当てその上からガーゼを当てるケアが、最も単純で短時間で可能です。傷にはそもそも周りの皮膚から常在菌が入ってくるのですから、清潔なガーゼを当てるという行為も医学的根拠がありません。
ガーゼとは何か?
■1870年頃,細菌は乾燥状態では増殖しないことがわかる。
■それなら,傷表面を乾かせば細菌が増えず,感染しなくなるのでは?
と考えた19世紀の医者がいた。
ガーゼは「創面を乾燥させる」 |
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創面を乾燥させ、 |
乾くと創面に固着し、処置時に疼痛を与え、出血させる |
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ガーゼ、ソフラチュールは |
しかし多量の滲出液の除去にはガーゼが必要な場合がある。
ガーゼは傷に食い込む!
自分のガーゼを |
他人のガーゼは |
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患者(他人)の痛みは痛くない! |
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ガーゼを張る医者は、 |
【4】湿潤ケア
傷は乾燥させないことが最も大切なケアの1つです。これは縫合創でも同じです。以前は、早く乾かして瘡蓋を作らせることが傷ケアのゴールドスタンダードのようにいわれていましたが、傷の乾燥は確実に創傷治癒を遅らせます。医療機関へ行くほどではないと考えられている傷も、ケア次第では感染が起こったり、強い痛みで競技が継続できなくなったり、いつまでも傷が治癒しなくて精神的ストレスを感じたり、あるいはやっと治ったと思ったら醜い傷跡で悩むこともあります。
【5】入浴
入浴により治癒が遅れることはありません。美容外科医としてこれまで多くの外科手術を行ってきましたが、患者を入浴制限させていたときより、翌日から入浴し創面を軽く洗浄するように指示してからのほうが、はるかに創面の治癒期間が短縮され、キレイに治るようになりました。出血が止まっていれば、翌日からの入浴、シャワーは可能です。頭部の外傷でも、傷を直接刺激しないようにすれば、翌日からシャンプーによる洗髪も可能です。怖がって創面を洗わないとかえって不潔になり、汚物がたまって感染源にもなりうるのです。
クリームの成分には界面活性剤が含まれている。界面活性剤、つまり中性洗剤と本質的に同じです。クリームは水と油が溶け合ったものです。皮膚に塗るとスベスベするし、ツルツルになります。しかし、クリームを洗い落とすとなぜか皮膚はゴワゴワ、シワシワになっていませんか?これはクリームに含まれる界面活性剤が皮膚の油を分解してしまったためです。皮膚の油(皮脂)は人間を感染から守ってくれている皮膚常在菌の生存になくてはならない栄養源です。それを洗い落とすのはとんでもない愚行です。
クリームに含まれる界面活性剤の疎水基は細胞膜の蛋白質に結合し、細胞膜を破壊します。皮膚科の教科書に「クリーム製剤は健常の皮膚にのみ用いること」と明記されているのは、健常の皮膚は角化層で守られているからクリームを塗っても大丈夫だよ、という意味でしょう。逆に言えば、角化層が正常でない皮膚(傷ついている皮膚、乾燥肌、アトピーの創部など)にクリームを塗ると、そこに含まれる界面活性剤が牙をむいて傷口に襲い掛かるわけです。
クリームとは?
クリーム=界面活性剤 |
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界面活性剤は細胞膜を破壊する |
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健常な皮膚には |
傷のある皮膚、創面に塗る時には要注意 |
軟膏剤のような医薬品の基剤や、化粧クリームのような化粧品などの基剤として用いられます。 また潤滑剤や皮膚の保湿保護剤としても用いられます。